2004年12月13日

マリコ/マリキータ / 池澤夏樹(文春文庫)

 池澤夏樹の小説はおもしろい。読んでいるうちにどんどんその物語に引き込まれてゆく。はじめて読んだのは、「スティル・ライフ」だったが自然との関わりについての独特な考え方に共感して他の作品も読みたいと思ったのがきっかけだった。

 これは五つの物語を収めた短編集である。表題作も好きだけどこの中で一番好きなのは、「帰ってきた男」である。この物語を読むたびに、「生きること」について考えさせられる。神秘的な音楽の聞こえる未知の遺跡の中で、すべてをその中に委ねて、「緩慢な自殺」をしようとする男と、「人がいるべき場所はこの地上以外にはない」と現実の世界に戻る事を選んだ男。もし僕が同じ立場にいたらやはり、「あちらの世界」よりも、「現実の世界」に戻る方を選ぶと思う。

マリコ/マリキータ
posted by 慈音 at 21:56| Comment(2) | TrackBack(0) | 慈音書房 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
はじめまして。僕も池澤夏樹の小説は好きで読んでいます。
ふとここでの記事を読んでコメントしたくなりました。
「マリコ/マリキータ 」は何度読んでも面白い短編集です。どれも甲乙つけがたい。
「帰ってきた男」は僕の心の奥底に深く沈みこむような感覚を持つ不思議な魅力のある小説で、特に好きです。
「ぼく」はほんのちょっとだけ「ピエール」より現実的な人間だっただけで、本当は「あちらの世界」に居たかった。だから、無理やり「ピエール」を連れてかえららなかった。ただそれだけの違いの葛藤。そのあたりが面白いところです。
話はそれますが、現代社会を生きるなら「梯子の森と滑空する兄」の「兄」のように生きられたら楽しいだろうなと考えます。
長くなってしまいました。それでは。
Posted by アキラ at 2004年12月15日 20:32
アキラさん、はじめまして。
確かに「ぼく」も残りたかったんだと思います。
でも現実的な考えがその時は勝ってしまった。
だから「ぼく」は帰って来て、その二つの思いの
間で揺れる心を閉ざすしかなかったのだと思います。
Posted by 慈音 at 2004年12月15日 22:28
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